倉沢
道はなかった。
かつては使われていたのだろう山道を歩いた。
夏の終わり、心地よい風が吹き始め、秋はもうすぐそこにいた。
目の前には崩壊寸前の集落があった。
遠い昔にタイムスリップしたような景色。
私には現役の頃の様子は想像すらできなかった。
歩いてきた道には、現役の給水タンクがあった。
かつてはこの村の住民も使っていたのだろうか。
前日までの雨。
濡れた落ち葉が覆う。
台所だったのかな。
山の斜面。
バリアフリーには程遠い、階段で繋がる小さな集落。
この村の末期には、一段一段手すりを握り上っていたのだろう。